USCPA試験合格体験記
2010年7月に4科目初受験し、全科目合格しました。
受験動機
私は、将来的には経営者・投資家・経営コンサルタントになりたいと考えています。長年 IT 技術者でしたが、経営者の視点により近い仕事をするため、財務・経理について学ぶことを思い立ちました。2009月11月に USCPA 試験が日本人にも合格可能な試験であることを初めて知り、受験を決意しました。
学習期間・学習体制
学習時間は以下の通り。
FAR | BEC | REG | AUD | Total |
346 | 79 | 384 | 197 | 1009 |
ベトナムから米国は遠いので、無謀かと思いましたが、4科目を一発で合格することを狙いました。
受験歴
教材
基本 Wiley のみですが、そこに至るまで紆余曲折がありました。以下は手を出した教材たちです。
[Gleim〕
最初に買った教材でした。コンピュータベースの教材がよいという評判をネットで聞き、FAR を購入。テキストは要点しか書いてなくて中身が理解できず、2009年12月は丸々ムダにしました。なので、あまり好きではありませんが、確かにコンピュータ教材の出来はよく、本番そっくりの環境だったのはよかったです。私は、テキストだの何だのと一式買ってしまって損をしました(ベトナムの関税を含めて約3万6千円!)。コンピュータ教材をダウンロードするだけでいいと思います。
〔Wiley〕
Wiley CPA Exam Review 2011, Financial Accounting and Reporting
- 作者: Patrick R. Delaney,O. Ray Whittington
- 出版社/メーカー: Wiley
- 発売日: 2010/10/05
- メディア: ペーパーバック
- 購入: 13人 クリック: 262回
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次に、Wiley CPA Exam Review 2010 という定番中の定番テキストを米国 Amazon から全科目分購入。結局、私は、この教材に救われることになります。
Wiley は特に、FAR と AUD の出来は素晴らしいと思いました。テキストは詳細な説明やわかりやすい例示が豊富で、勉強しやすかったです。
FAR は、テキスト・問題とも素晴らしいと思います。これ一冊みっちりやれば他の教材は要らないのではないでしょうか。
AUD は巻末の監査基準(SAS) の要約が素晴らしいです。AUD に関しては何をさておき、 Wiley が大変お勧めです(米国人の間でも評判がよいようです) 。SAS やその他の会計・監査基準については、ネットを活用して原典に当たりました。内部統制については、もうちょっと具体的な説明を増やしてくれてもよかったかな、という気はします。
BEC と REG は確かに微妙な部分はあるかもしれません。
BEC の Business Structure は悪くないと思います。でも、それ以外の部分はやや解説をはしょりすぎて、わかりずらい部分がありました。私は、大学で経済学やファイナンスを学び、日商簿記2級で工業簿記(原価計算)の知識があり、IT 技術者なので、BEC は私にとって有利だったかも。Business Structure 以外は、あまり真面目に本文を読まず MCQ(multiple choice questions) を解き、間違った問題の解説を読んで、理解を深めることに努めていました。
REG は、最大の鬼門でした。ビジネス法のテキストは悪くない(といってもやや詳しすぎるきらいあり)とおもいますが、税法が・・・。税法は基本的に無限に複雑なので、どれくらい解説するかは難しいところかと思いますが、Wiley はある意味「良心的(?)」に詳しく解説してあるので、あやうく泥沼に足を引きずりこまれるところでした。私は、Wiley を読んでもよくわからない部分に関しては IRS(米国内国歳入庁)のウェブサイトでさまざまな税務処理を学びました。
Becker の要点ノートみたいのを見る機会があったのですが、よくまとまっていてよかったです。Becker のことはよく知りませんが、REG に関しては、Becker も検討してみてもいいのかも(米国の独学派は、いまは Wiley より Becker を使うことが多いと聞きます)。
〔通勤時間を使って米国公認会計士になれる本〕
- 作者: ANJOインターナショナル
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2004/06/05
- メディア: 単行本
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倒産してしまった ANJO の出した本で、キワモノぽい名前ですが、中身は至ってまともです。かなり古い本で、細部は現在はいろいろ変わってきてしまっている部分もありますが、概略を理解するには問題ないかと。日本語でざっと出題範囲の全貌をつかむのには、大いに役立ちました。薄いのでかなり速く読みおえられます。中古で安く売ってますので、お勧めです。5冊シリーズで私は全巻購入しました。
〔プロアクティブ USCPA 集中講義〕
- 作者: 階戸照雄,建宮努,杉浦理介,プロアクティブグアム大学日本事務局
- 出版社/メーカー: 中央経済社
- 発売日: 2008/12
- メディア: 単行本
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市販されている日本語テキストでは一番まともそうに見えたので、全4冊まとめ買いしました。FAR はまとまっていてよかったのですが、AUD はどうも散漫な印象で途中で投げ出しました。REG は図表が豊富で文字中心の英語のテキストを補完する関係にあるかも(ただし私は Wiley との往復に疲れて、こちらを読むのはやめてしまいましたが) 。BEC は結局、全く読んでいないので論評できません。
[その他]
- 作者: 盛田良久,朴大栄,百合野正博
- 出版社/メーカー: 中央経済社
- 発売日: 2007/05
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 25回
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「まなびの入門監査論」は日本の会計監査制度に関する概論ですが、米国の会計監査を学ぶ上でも大いに参考になるかと。これは教科書ではないので、直接 USCPA 試験の役には立ちませんが、総合的な理解は深まるかと思います。
新・米国公認会計士試験重点解説シリーズ 企業会計 (新米国公認会計士試験-重点解説シリーズ-)
- 作者: 杉浦理介,虎ノ門アカウンティングスクール
- 出版社/メーカー: 清文社
- 発売日: 2004/03
- メディア: 単行本
- クリック: 12回
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学習法
2時間を1本として、ノートにまず、
May 3 9:00-11:00
という風に記して、勉強時間をコミットしました。そしてつらくとも自分と約束した時刻までは勉強するようにしました。(その代わり、プラスマイナス30分の誤差は許容しました。上の例では 1時間31分から2時間30分は、全て2時間としてカウントしました) これを1本として、1日3本(6時間)または4本(8時間)を勉強することを目標にしました。(勉強時間の最高記録は6本12時間でした)
そして、勉強した時間はすべて Excel 上に記録していきました。
ダラダラせず集中して勉強することが肝要だと思いました。
Wiley で、MCQ の正答率 90% を目指しました(実際の完成度は 85-90% くらいでしたが)。MCQ は Wiley 全4冊についてそれぞれ2回ずつ解きましたが、基本的にはテキストの理解を重視しました。Simulation は、Gleim のサイトをちらっとのぞいたのと、Wiley で REG の税法の問題と AUD の内部統制の問題を数問解いただけで、あとは特別な対策は行いませんでした。Written Communication(作文)も数問 Wiley の REG の問題を解いただけでした。
よかった点・悪かった点
私がUSCPA 試験を受験する上で、よかった点・悪かった点を列記してみます。
[よかった点]
[悪かった点]
- 勉強仲間がいなかった
- 予備校に行かなかったため情報が少なかった
- 日本でも米国でもない不便な発展途上国にいたため、本や CD のネット購入に少し苦労した。
- 部屋にエアコンがなかったので、3月4月の猛暑のときは、連日、近所のカフェに逃げ込むしかなかった(これは実際、かなり大変だった)
- 仕事を休んで、退路を断っていたので、未来について考えこんで、精神的につらいときがあった
費用
教材費 | ||
Wiley4冊 | 18,163 | |
通勤時間シリーズ5冊 | 3,102 | |
GLEIM FAR | 36,535 | |
USCPA 集中講義シリーズ4冊 | 21,618 | |
まなびの入門監査論 | 1,343 | |
新・米国公認会計士試験重点解説シリーズ 企業会計 | 2,997 | |
小計 | 83,758 | |
USCPA 出願費用(受験・学歴審査・公証・送料) | 110,370 | |
渡航費 | ||
航空券(ホーチミン→東京) | 50,057 | |
航空券(東京⇔ホノルル) | 80,660 | |
航空券(東京→ホーチミン) | 55,040 | |
ホノルル宿泊 | 36,242 | |
小計 | 221,998 | |
合計 | 416,126 |
教材費は、GLEIM と集中講義が微妙にムダ使いでした。これらは少し削れたかもしれないですが、結果論かもしれません。英語力さえあれば、Wiley だけでも十分合格できると思います(部分的に解読が難しい部分がありますので、勉強仲間はいたほうがいいかもしれないです)。
航空費だけで約19万円とずいぶん掛かっています。日本で滞在せずにバンコク発券の安いチケットで直接ハワイに飛んでしまえば、10万円くらいで往復できたかもしれません。
日本人にはいろいろとカネのかさむ試験ですが、来年から日本でも受験できるそうですので、渡航費は大幅に減らせるかもしれません。
私は、受験専業でしたので、実際には仕事をしていたら稼げていただろう機会費用が大幅に掛かっています。なので、働きながら、予備校を使って効率的に合格するのが、経済的には一番賢いやり方でしょう(体力的には、本当に大変だと思いますが・・・)。
受験を終えての感想
私は、独学でやりましたが、孤独で非常につらいのでお勧めはしません。上にも書いたとおり、働きながら予備校を使うというのが賢いやり方でしょう。しかし、私がやったように、「Wiley +ネット上での調べ物」だけで、合格点に達することは可能ではあります。独学が好きで、勉強時間と覚悟が十分にあるのであれば、独学でもいいかもしれません。
Written Communication に関しては、どうやら、内容より形式が問われるようです。内容が正しいかはそれほど問題ではなく、質問とまったく無関係なことを書かないかぎり、大丈夫のようです。むしろ、誤字脱字がなく文法的に正しく、文章の構造がしっかりしていて論理的であるかどうか、のほうが重要であるようです。要するに英語の試験に近いということですね。
AUD も日本人受験生が苦手にしているようですが、結局、これも英語力の問題ではないか、と。文法力が危ういと文章の正確な意味が取れないものです。
USCPA試験は当然英語で出題されますから、遠回りなようですが、まずは TOEIC で800点(できれば900点)くらいの実力を身につけてから挑戦するのが、結果的には早道ではないかと思いました。
勉強のやり方は人それぞれですから、早い時期に自分にあったやり方を見つけ、あとは自分を信じて、ひたすら勉強するだけだと思います。日本の一部の難関資格試験と異なり、誰でも努力すればいずれは必ず合格できる試験ですので、最後は意志力の問題でしょう。これから受験される方々のご成功をお祈りしております。