Ruby で学ぶアメリカ税制 - 関連当事者取引による損失

関連当事者というのは、たとえば家族であれば、直系親族と兄弟、会社であれば、50%超を所有する株主と会社などの関係がこれに当たります。詳しい定義は教科書にゆずるとして、基本的に税務当局の見方は、「おまえら、別々の実体があるふりをしてるけど、実際は同じやんけ」ということです。さすが税務当局、人が悪いですね。

具体的に次のような例を考えます。登場人物は3人、A, B, C で、主人公は B です。A と B は関連当事者です。C は他人です。いまある資産があって、これが A → B → C と順番に売却されていくとしましょう。2回売却があるわけですけれども、B が取得したときの価格を pb、C が取得したときの価格を pc としましょう。Aが持つ調整税務簿価をbaとしましょう。

このとき、ba > pb ならば、A から見て売却損が出ているわけですが、これは税制上損金に算入できません。A と B はグルで、A のために利益操作をしてるのではないか、と税務当局は疑っているわけですね。しかしながら、資産を取得した B は pb を税務簿価とします。(ちなみに保有期間タイマーはここでリセットされます)問題は、BがCに資産を売却したときの損益をどう考えるか、です。

基本的には、あたかも A が直接 C に売却したかのような扱いをします。税務当局は A と B は実際には同一人物だ、と見なしているわけですから、これは当然でしょう。損益は pc - ba で計上します。

・・・といいたいところですが、そこはずるい税務当局です。「利益はまあ、pc - ba でいいだろう、しかし、損失は pc - pb しか認めないぞ!!」というのです。なんという二枚舌でしょうか。

というわけで、だんだん腹が立ってきたので、頭を冷やすため、Ruby のプログラムを書くことにします。
(ちなみに ba < pb の時は特別なことは何も起こらないので、ここでは考えないことにします)

def gain_on_related_parties(ba, pb, pc)
  raise unless ba > pb # 関連当時者取引で損失が発生する場合だけを考える。

  gain = pc - pb

  if gain > 0
    return [0, pc - ba].max
  else
    return pc - pb
  end
end

def main
  ba = 100
  pb = 70
  pc = 120
  puts "case1: recognized gain = %d" % gain_on_related_parties(ba, pb, pc)

  ba = 100
  pb = 70
  pc = 80
  puts "case2: recognized gain = %d" % gain_on_related_parties(ba, pb, pc)

  ba = 100
  pb = 70
  pc = 50
  puts "case3: recognized gain = %d" % gain_on_related_parties(ba, pb, pc)
end

main

このプログラムの出力結果は、

case1: recognized gain = 20
case2: recognized gain = 0
case3: recognized gain = -20

となります。

case 1

入力

ba = 100
pb = 70
pc = 120

出力

case1: recognized gain = 20

このケースではCへの売却価格がAの調整税務簿価を超えています。この超える分が申告する売却益(認識利益)となります。

case 2

入力

ba = 100
pb = 70
pc = 80

出力

case2: recognized gain = 0

このケースではBから見たら売却益が出ていますが、Cへの売却価格がAの調整税務簿価を下回っています。したがって、この場合には申告する利益はありません。

case 3

入力

ba = 100
pb = 70
pc = 50

出力

case3: recognized gain = -20

このケースではBからCへの取引で売却損があるケースです。この場合は、この売却損をそのまま認識損失とします。

まとめ

よくよく見ると、贈与された資産の売却損益の計算とそっくりですね。売却価格から引く数字が二つあって、税務当局にとって得な方を選ぶ、ということですね。(贈与の場合は、贈与者の税務簿価と贈与時の公正価格の2つでした)今回も税務当局のえげつなさが浮き彫りになるお話でした。

次回は、交換取引について考えてみたいと思います。