税法というこの怪物

ちょっと勉強の話を離れて軽く税法について。

いまアメリカ税制を勉強していますが、実につまらないです。人生でこれほどつまらないものを勉強した記憶がほとんどありません。Wiley の問題でさえつまらないです。すべてがつまらない。なぜこんなにつまらないのか理由を考えてみました。

アメリカ税法を勉強しても自分の人生と直接関係ない
私はこの先もおそらくアメリカで確定申告することなどまずないでしょう。そういう意味では、アメリカの税制に関する詳細な話はいっさい無用の長物です。IRA? Roth IRA? たぶんアメリカ人なら目の色を変えて、所得控除や税額控除を探すのでしょう。そう、やはり税制というのは自分が税を払う立場にならないと燃えないのです。逆に、アメリカ人の中には、税制の穴を探すのをゲーム感覚で楽しんでいる人がいるかもしれないです。実際、節税という形でお金も入るしね。
税法の圧倒的な無意味な複雑さ
どこの国でも税制は複雑です。その複雑さは、たとえば量子力学のような難しさとは完全に趣を異にしています。税制というのは政治そのものです。そこに様々な人々の思いが交錯し、複雑な政治力学が働いた後に作られる、醜い妥協物です。そのため、税法の条文というのは常に奇形的な進化を遂げます。人間の合理的な理解を敢然と拒絶するような、そのカフカ的不条理。すべての条文の歴史的経緯がわかるなら、現行の税法に対する理解が深まるでしょうが、その歴史自体がまた複雑怪奇であったりするわけです。なかなか演繹的に現在の条文の体系を理解するのは難しいですね。
試験問題の無味乾燥さ
税法の圧倒的な複雑さの帰結として、実務レベルの問題を試験に出題するのがほぼ不可能です。ちょっと勉強してみてわかりましたが、一つの会計現象に対して、複数の条文が関係するとき、その相互作用をどう解釈するか、実務上きわめて難しい問題を含んでいます。おそらく実務家は、税法・税務当局のガイドライン判例などを参考にして、なんとか自分なりの解釈を見つけるのでしょう。それが税務当局と争いになれば、裁判で決着を付ける、ということになるかもしれません。これくらい税法をやり込めば、少しは面白いのかもしれませんが、限られた時間で行われる、網羅的な USCPA の試験に出題するわけにはいきません。当然ながら、極めて人工的な前提の上で、枝葉末節の知識を問うような問題が多くなります。これが、実につまらないわけですね。

というわけで、私は USCPA の税法は、救いがたく退屈である、という結論に達しました。「USCPA 試験問題税法」という一種の架空世界でのゲームを攻略するのだ、という割り切りが必要でしょう。クロスワードパズルを解いているよりは面白いし役に立つかもしれませんが。