統一資本化ルール

内国歳入法(IRC) 263A 条は、期末棚卸資産等の評価に関して「統一資本化ルール(Uniform Capitalization Rules)」を定めています。これは、製造したり再販売するため資産を取得したときに、直接費だけでなく、賦課可能は間接費はすべて、資本化しなくちゃだめよ、という話です。「間接費も」というところがミソです。

これは、ある訴訟について1974年に下された判決がきっかけで制定されたようです。ある会社がある器具を使って、自分の施設を改善しました。問題になったのは、この器具の減価償却費でした。この会社は財務会計上は、この減価償却費を改善された施設の一部として資本化しました。その一方で、税務会計上は、この減価償却費を全額損金として控除していたのでした。こうすれば、投資家向けには利益を多く見せながら、IRS に払う税金は少なくなりますから、会社にとってはおいしいです。結局どちらの処理が税法上正しいの?というのが争点でした。

判決は、税務上も減価償却費を施設の一部として資本化せよ、というものでした。IRS 大歓喜ですね!

Publication 334 (2009), Tax Guide for Small Business によると、事業目的で次の活動を行うとき、統一資本化ルールに従わなければなりません。

  1. 不動産また有形動産を生産するとき(ここでは、有形動産に映画・録音・ビデオテープ・書籍等を含みます)
  2. 再販売目的で財産を取得するとき

上の1.は 製造業、2.は小売業・卸売業ですね。

ただし次の財産は、統一資本化ルールに従わなくてもよいとされています。

  1. 再販売のために取得した有形動産で、事業者の過去3年の平均粗収益が1,000万ドル以下。
  2. 事業者が製造した財産で次のいずれかの条件を満たすもの。
    • 製造に要した間接費が2,000万ドル以下
    • 現金主義を使っていて、棚卸資産を計上する必要がない

これと前々回前回で見た会計方法の選択の話と重ね合わせてみましょう。

2つのケースを考えてみます。(1) C 会社で小売業または卸売業 (2) C会社で製造業です。

C会社で小売業または卸売業

平均粗収益に応じて、3つの場合が考えられます。*1

(1) 平均粗収益が1,000万ドル超
この場合、統一資本化ルールを適用しなければなりません。

(2) 平均粗収益が100万ドル超〜1,000万ドル以下
統一資本化ルールは適用しなくてかまいませんが、小売業や卸売業ではモノの販売がありますから、実現主義を使って棚卸資産を計上しなければなりません。直接費は資本化するが、間接費は資本化しなくてもいい、ということですね。

(3) 平均粗収益が100万ドル以下
Revenue Procedure 2001-10 の下で、仕入・販売に関して現金主義を使うことが許されます。

C会社で製造業

製造に要した間接費が2,000万ドル以下で、統一資本化ルール免除、というのは簡単ですね。

平均粗収益から見ると次の2つの場合が考えられます。

(1) 平均粗収益が100万ドル超
この場合、統一資本化ルールを適用しなければなりません。

(2) 平均粗収益が100万ドル以下
Revenue Procedure 2001-10 の下で、仕入・販売に関して現金主義を使うことが許されます。従って、統一資本化ルールの適用はありません。

まとめ

こうやってみると、製造業は小売業・卸売業より厳しいですね。製造業のほうが間接費が多くなりがちなのかもしれません。こんな風に、IRC 448条(現金主義の使用制限)とIRC 263A 条(統一資本化ルール)とRevenue Procedure 2001-10が関係しているんですね。税法は奥が深いですね。ふーぅ。

*1:正確には会計方法の選択と統一資本化ルールでは、粗収益テストの中身がやや異なるので、注意。会計方法の選択のほうが厳格である。