厳格責任

厳格責任(Strict liability)は、たとえ過失(negligence)や悪意(scienter)がなくても、その人の行為の結果、発生した損害に対して責任を負うという立場です(過失や悪意をまとめて有責性(culpability) と呼びます)。

コモンローでは伝統的に、少なくとも過失がなければ責任を負わないという考え方が主流でした。しかし、ある種の危険を伴う行為に関しては、その行為者に最大限の注意を尽くすことを強制すべく、有責性がなくても、客観的にその行為が損害をもたらした場合には、その責任を取らせるような考え方が生まれました。

Strict liability - Wikipedia, the free encyclopedia

たとえば、運送業者は厳格責任を負うとされています。つまり過失がなくても荷物に損害が生じた場合、賠償責任が発生するのです。厳しいですね。ただし次の3つの場合では免責されます。

  1. 自然災害(acts of God)
  2. 送り手の行為(acts of the shipper)
  3. 公衆の敵の行為(acts of a public enemy)

もう一つの重要な例は、製造物責任(Product liability)です。

Product liability - Wikipedia, the free encyclopedia

次の4条件が揃うと、たとえ有責性がなくても、売り手は買い手に対して製造物責任を負います。

  1. 販売時に製品に欠陥があった。
  2. 欠陥は使用者に対して非合理的に危険。
  3. 製品が使用者の手に渡るまでの間に、大きな改変がなされていない。
  4. その欠陥が損害を与えた。

製造物の欠陥は3種類にわかれます。

  1. 製造上の欠陥
  2. 設計上の欠陥
  3. 不適切な説明または警告上の欠陥

売り手にとっては厳しい条件ですが、現代の商品は極めて複雑で、売り手しかわからない事情が多いですから、これもやむを得ないかもしれません。今日も私はスーパーで食用油を買ったのですが、特定の商品が安全か否かさっぱりわかりません。こういう場合、売り手の企業に厳しい責任を負わせるのは仕方ないことかもしれないです。

売り手に厳しい条件を課す製造物責任ですが、防御方法もなくもありません。

  1. Assumption of risk
  2. 誤用

Assumption of risk は危険を自らわかって引き受けることです。間違った使い方までさすがに売り手は責任を持てないというのはわかります。

現在、アメリカの製造物責任は、the Restatement (Third) of Torts: Products Liability というところで記述されています。UCC も作っている ALI(the American Law Institute) によるコモンロー明文化プロジェクトの一環です(アメリカってこういう民間団体が法律を作ってるところがしびれるんですよね・・・)。

アメリカの法律は奥が深いです。