米国統一商法典(UCC)

アメリカでは、ビジネスに関する法律の多くが、州レベルで定められています。たとえば有形動産の売買に関する法律は各州が定めています。

こういう州の商法の雛形を提供しているのが、米国統一商法典(UCC)です。

Uniform Commercial Code - Wikipedia, the free encyclopedia

これは、NCCUSL と ALI という2つの法律家の民間団体による共同作業で作られたようです。別に、これ自体が法律ではなく、各州はこれをそのまま採用してもいいし、適当にカスタマイズして採用してもいいのです。実際には、ほとんどの州で UCC がそのまま採用されています。唯一の例外は、ルイジアナ州です。旧フランス領であり、ここでは大陸法の流れを汲む法律を採用しているようです。

UCC 自体は、法律家の研究プロジェクトですから、不断の進化を遂げています。たとえば、2003年に UCC Article 2(有形動産売買)を近代化すべく大幅に改定されました。しかし、この改定を反映している州はまだないとのことです。

面白い例を見つけました。

昨日学んだ詐欺防止法は、$500 以上の有形動産の売買契約は、書面にすることを求めています。これは、UCC が定めた条項です。

$500 と書きましたが、実は 2003年に改定された UCC 新 Article 2 では、$5,000 に大幅アップされているんですね。確かに、インフレ分を調整すると、$5,000 がいまの時代に合っているのかもしれないですが、どの州もまだ採用していません(一つの州だけがやる、というのもいろいろ問題が起きそうですしねえ・・・)。

いつもお世話になっているコーネル大学UCC の原典を見てみましょう。

Uniform Commercial Code - Article 2

§ 2-201. Formal Requirements; Statute of Frauds.


(1) A contract for the sale of goods for the price of $5,000 or more is not enforceable by way of action or defense unless there is some record sufficient to indicate that a contract for sale has been made between the parties and signed by the party against which enforcement is sought or by the party's authorized agent or broker. ...

おお〜。$5,000 とはっきり書いてありますねえ〜。

では私が USCPA の願書を提出したメイン州の州法を見てみましょう。

Title 11, §2-201: Formal requirements: statute of frauds

§2-201. Formal requirements: statute of frauds


(1). Except as otherwise provided in this section, a contract for the sale of goods for the price of $500 or more is not enforceable by way of action or defense unless there is some writing sufficient to indicate that a contract for sale has been made between the parties and signed by the party against whom enforcement is sought or by his authorized agent or broker. ...

まだ $500 のままです。気になるのは、改定 UCC のほうでは、"writing" の代わりに "record" と書いてあることですね・・・。これはひょっとしたら電子的記録のことを考慮しているのかもしれません。

しかし、法律といえば役人が作るもの、と相場が決まっている日本とは本当に違いますね。しかも日本の都道府県の条例は国の法律の規定を超えられないので、中央省庁の作る省令より実質的に効力が劣るありさまです。人口1億2千万人の国にしてはちょっと中央集権的すぎやしないでしょうかね・・・。道州制を導入して、アメリカ同様にビジネス法は州に任せれば、地方にも活気が出てくるかもしれません。

というわけでまた次回。