詐欺防止法

英米法を採用している国々には、詐欺防止法(Statue of Fraud)があります。

「詐欺防止」という名前はついているのですが、実際には、他者に契約違反の濡れ衣を着せて、契約を取り消したり、損害賠償を請求しようとする悪い契約当事者から、善意の契約当事者たちを保護することを目的にしています(とはどこにも書いていないのですけど、実態はそんな感じだと思います)。

Wikipediaによれば、詐欺防止法のオリジナルは 1677 年にイギリスで制定されたようです。実は、本家イギリスでは1954年に廃止されてしまったようなのですが、アメリカでは生き続けています。が、正式にはどういう形で法的な効力が与えられているのか私にはよくわからないのです。一部を除いて制定法ではないのかもしれません。これがコモンローというやつでしょうか。大陸法の制定法中心の国で育った人間にはなんとも不思議な感じです。

詐欺防止法の基本的なアイディアは、ある種の契約は書面に残しておかない限り、契約を強制執行できない(unenforceable)というものです。つまり法による保護が与えられないということですね。

この法による保護の中身については私はよくわかりません。基本的には、契約が存在することを前提とした、契約の取消、債務の履行、損害賠償を求めた訴訟等が詐欺防止法の条件を満たさないと行えない、ということなのかもしれません。

参考サイト:
The Statute of Frauds and Contract Law

The Statute of Frauds | TheLaw.com - Free Legal Help Guide | Lawyers | Legal Advice

具体的内容

具体的な中身を見てみましょう。どのような契約を詐欺防止法に従って書面で残さなければならないでしょうか。これは有名な語呂合わせがあって、MYLEGS と覚えるようです。

結婚(Marriage)

結婚の成因としてある約束をした場合です。夫が妻に「結婚したら、1000万円の指輪を買ってあげる」と約束したが、それが不履行になった場合などです。この場合、書面での契約書がなければ、この契約は強制執行可能ではありません。(しかし、あまりないケースだとは思いますが・・・)

年(Year)

1年以内に履行が完了する可能性のない契約です。可能性がない、という含みのある表現をしたのは、1年以内に終わってしまう可能性がある場合には、詐欺防止法は適用されないのです。5年契約とか終了期限が明示されている契約は文書にしなければなりませんが、期間が明記されず、半年後に終わるかもしれないし、2年かかるかもしれない、などというときには、口頭の契約でいいわけです。

土地(Land)

土地に権利移動に関する契約は書面である必要があります。面白いのは、口頭であっても、書面と同等の効力が認められるときがあることです。それは、

  1. 新所有者による一部の代金の支払い
  2. 新所有者による土地の占有
  3. 新所有者による土地の改良

などがある場合です(多くの裁判所によれば、上の3つすべてが必要なようです)。
遺産執行人(Executors)

遺産執行人の個人の資金から、遺産財団の借金を支払う約束は書面でなければなりません。

商品(Goods) 

UCC によれば $500 以上の有形動産の売買契約は書面が必要です。これは制定法で詐欺防止法が規定されている例ですね。(まあ UCC 自体が「法のテンプレート」という感じのもので、各州がそれぞれ勝手にカスタマイズして使っているようですが・・・)

連帯保証人(Suretyship)

誰かの借金の連帯保証人になるときには、書面の契約書が必要です。つまり書面がなかったら「お前、連帯保証人の約束しただろ?借金を肩代わりしろ」と言われなくて済むということですね。

まとめ

いかがだったでしょうか。Wiley にはいろいろ細かいことが書いてあるわりには、問題はそこまで難しいことを問うていないですね。詐欺防止法の基本的な考え方を押さえて、期間・土地・商品に関する詐欺防止法の適用要件を理解すれば、試験対策には十分な気がします。