雑控除の雑学

アメリカ個人所得税の項目別控除のうち最後の項目がこの雑控除(Miscellaneous Deductions) です。名前の通り雑多な控除が集まっています。おぼろげに立法者の意図は感じます。それは「非事業所得を生み出す契機となった費用はここで差し引こう」ということです。

ここでも、Wiley よりPub 529のほうがわかりやすいので、これを中心に見てみます。

雑控除は次のような構造をしています。

AGI の 2% の制限を受けるもの

  1. 払い戻しを受けない従業員の費用
  2. 税務申告の準備のための費用
  3. その他の費用

AGI の制限を受けないもの

「AGI の 2% の制限を受けるもの」に関しては、このグループに属するすべての控除を合計したのち、AGI x 2% を引いて、最終的な控除額とします。

上の「その他の費用」も基本的に非事業所得を生み出すために支出された費用や、税額を決定したり納税・還付を受けるための費用であったりします(とはいえ、ちょっと首を傾げるようなものも含まれていたりしますけど)。

ここらへんの考え方をよく示しているのは、離婚をめぐる法務費用です。離婚に関連する税相談や課税対象の離婚手当の支払いを求める訴訟費用などは、AGI 2% 控除です。しかし、財産分与に関する法務費用は控除できません。前者が控除できるのは、それらが所得を生み出して税を申告する過程で発生した費用だからであり、後者は純粋に B/S 的な財産の移転にすぎないからでしょう。

ところで、雑控除は、基本的にはサラリーマンの経費を控除する場です。アメリカはサラリーマンもみな例外なく確定申告します。サラリーマンは数も多いので、IRS との紛争も相当の数に上ると思われます。おそらくは雑控除はかれらの主戦場の一つでしょう。そこで、Pub 529 は 26 項目に渡って、控除できない費用を明記しています。その中で変わり種を紹介しましょう。

通勤費
ちょっと意外な感じですが、通勤費は控除できません。しかし、出張費や仕事中の移動にかかる交通費は、AGI 2% 控除できます。
同僚とのランチ代・残業したときの食事代
原則として控除できないです。つか、こんなのを控除しようと企てるアメリカの納税者はたくましいですね〜
個人的な法務費用
所得を生んだり、税を払ったりすることに関係ない、親権・婚約・損害賠償・権原の準備・遺言の作成・離婚の財産分与などに関わる法務費用は引けません。
有名になるための費用
職業的な評判を上げるために行う、テレビ・ラジオへの出演にかかわる費用は控除できないそうです。アメリカっていろんな人がいますね(笑)
腕時計代
仕事に関係あっても控除できないそうです。なんでこんなものがわざわざ明記されているのやら。

というわけで、試験対策的には、主な項目がどのカテゴリに分類される雑控除なのか、あるいは控除できないのか、というのを覚えた方がいいらしいです。私は、雑控除のために1日半も使いましたが、そんなに勉強しなくてもいいかも・・・。いっそのこと捨てるというのも手かもしれません(笑)