2010-01-01から1年間の記事一覧

詐欺防止法

英米法を採用している国々には、詐欺防止法(Statue of Fraud)があります。「詐欺防止」という名前はついているのですが、実際には、他者に契約違反の濡れ衣を着せて、契約を取り消したり、損害賠償を請求しようとする悪い契約当事者から、善意の契約当事者た…

1933年連邦証券法の登録義務免除

1933年連邦証券法の立法趣旨は、潜在的な投資家に対して、証券の発行に関する重要な情報の開示を徹底させることにより、投資家が投資の是非について賢明な判断が下せるようにしようというものです。(1929年のニューヨーク証券市場の大暴落の反省に基づいてい…

1933年証券法と1934年証券取引法

会計士が不法行為による賠償責任を負うケースとしては大きく分けて二つの場合があります。 コモンローによる責任 制定法による責任 コモンローによる賠償責任には、 契約違反 過失 詐欺 の3つがあります。制定法による賠償責任で有名なのは次の2つです。 193…

会計士が過失責任を負う相手は誰か?

あなたは USCPA で、A 社の財務諸表(F/S)を監査しました。実は F/S には重大な虚偽表示が含まれていたのですが、あなたはそれに気が付かず、適正意見(unqualified opinion)を表明してしまいます。悪いことに A 社はまもなく倒産してしまいました。問題の F/…

詐欺の成立要件

ついにあの憎き税法が終わり、同じ REG でもビジネス法に戻ってきました。普通の法律のほうが筋が通っているので学んでいてずっと楽しいですね。税法のカフカ的不条理はもううんざりです。今日は詐欺(fraud)の成立条件を考えます。D が P に対して詐欺を働い…

エッセイ - パートナーシップからの非清算的分配

所得税に関する SIM エッセイ。今回は「パートナーシップからの非清算的分配」です。課題は以下の通りです。 パートナー B と H は、経営するパートナーシップ M が、含み益を持つ C 社の株式を分配したとき、利益を認識しなければならないかどうか懸念して…

エッセイ - パートナーシップとパートナーの税務年度の関係

所得税に関する SIM エッセイ。今回は「パートナーシップとパートナーの税務年度の関係」です。パートナーシップとパートナーが別々の税務年度を持っていることがあります。パートナーシップの所得は、パートナーにパススルーされて、パートナーが確定申告す…

USCPA 試験の勉強法

早いもので、USCPA の勉強を開始して4ヶ月も経ってしまいました。全然賢くなっていない気がするのはなぜでしょうか(苦笑)いままでの4ヶ月を振り返ると、最初は、Gleim、次に Wiley、そして「通勤時間を使って米国公認会計士になれる本」さらに「USCPA 集…

Ruby で学ぶアメリカ税制 - パートナーシップへの現物出資

ようやく個人所得税の学習が終わり、パートナーシップ関係の課税について勉強できるようになりました。やったあ。パートナーシップというのは、2人以上のパートナーが出資して作られる営利の事業体です。会社の簡易版みたいなものと考えればいいでしょう。今…

エッセイ - 災害盗難損失控除

所得税に関する SIM エッセイ。今回は「災害損失控除(casualty and theft loss deduction) 」です。原則として個人的費用というものは、控除の対象にならないのですが、その例外として、個人使用目的資産の災害盗難損失控除があります。課題は以下の通りです…

エッセイ - 医療費控除

絶賛好評中(?)の所得税に関する SIM エッセイ。今回は「医療費控除(qualified medical expenses deduction) 」です。 2009年1月、スミス氏は、心臓手術を受けた。費用合計は、$100,000 で、下りた保険金は、$82,000 だった。スミス氏は、残りの $18,000 …

エッセイ - 子供と被扶養者を世話するための税額控除

昨日に引き続き、所得税に関する SIM エッセイ。今日の話題は、「子供と被扶養者を世話するための税額控除(Child and Dependent Credit)」 です。 Green 氏は、扶養する一人の子供がいる。彼が働く間、子供の面倒を見てもらうため、ベビーシッターに $5,000 …

エッセイ - 住宅ローン利息の控除について

相変わらずしつこく、所得税を勉強し続けています。ようやくシュミレーションが勉強できるようになってきました。苦手意識はあるのですが今日は Wiley のエッセイ問題に取り組んでみました。設定はこんな感じです。 Cole 氏は、最近、CPA のライセンスを取得…

Ruby で学ぶアメリカ税制 - 子供と被扶養者の世話のための税額控除

子供と被扶養者の世話のための税額控除(Child and Dependent Care Credit) は以前話した通り、子育て支援の優遇税制です。親が外に働きに出られるように、世話に手間のかかる子供を世話するベビーシッターや家政婦を雇ったとき、その費用の一部を税額控除す…

Ruby で学ぶアメリカ税制 - 高齢者・障害者税額控除

高齢者または障害者向けの優遇税制です。以下 Wiley の記述に基づいて、話します。IRS Publication にはあたっていないので、細部で間違いがあるかもしれませんが、ご了承ください。Wiley では、障害者のための税額控除には詳しい記述がありませんので、高齢…

子育てを支援する税額控除

最近ようやく税額控除(tax credit)のところまで勉強が進みました。税額控除というのは、課税所得に税率をかけて、暫定的な税額を計算したところから始まります。基本的には暫定税額を直接どんどん引いていくだけなので、簡単なような気もします。しかし、一…

消極的活動

米国所得税法の独特の考え方として、消極的活動(passive activities)という概念があります。簡単にいえば「ある事業に対して、投資家ほど身を引いていないが、積極的に経営に参加しているともいえない」というような中間的な性格を持った活動のようです。消…

NOLの正体

アメリカの所得税法上に NOL(net operating loss)という概念があります。基本的には事業で発生した純損失です(例外は多少ありますが)。ただ確定申告(tax return)との関連でいうと、むしろ繰り戻し(carry back)や先送り(carry forward)することで、他の年の…

統一資本化ルール

内国歳入法(IRC) 263A 条は、期末棚卸資産等の評価に関して「統一資本化ルール(Uniform Capitalization Rules)」を定めています。これは、製造したり再販売するため資産を取得したときに、直接費だけでなく、賦課可能は間接費はすべて、資本化しなくちゃだめ…

会計方法の選択(その2)

前回に引き続き税務上の会計方法の選択について考えます。 おさらい 簡単におさらいをしましょう。「読みやすさ最適化オプション」をオンにして、枝葉末節を切り捨てて、本筋だけ話します。 納税者は、現金主義と実現主義を選べるよ。混ぜて使うこともできる…

会計方法の選択

税務上の会計方法(accounting method)には、現金主義(cash method)と実現主義(accrual method)があります。現金主義は、現金の受け渡しを以て、収益と費用の発生を認識する素朴な会計方法です。より合理的だと考えられるのは、現金の受け渡しとは関係なく、…

アメリカの社会保障制度と優遇税制

私は、いまアメリカの個人所得税の理解にとんでもなく時間がかかっています。自分の頭の悪さを呪う日々です。なぜこんなに時間がかかっているのでしょうか。アメリカの個人所得税の理解が難しいのは、そこに膨大な所得不算入(exclusion)・所得控除(deduction…

雑控除の雑学

アメリカ個人所得税の項目別控除のうち最後の項目がこの雑控除(Miscellaneous Deductions) です。名前の通り雑多な控除が集まっています。おぼろげに立法者の意図は感じます。それは「非事業所得を生み出す契機となった費用はここで差し引こう」ということで…

Ruby で学ぶアメリカ税制 - 慈善的寄付控除の上限

最近は、アメリカ所得税の項目別控除の話を調べています。どうも項目別控除は、IRS と納税者との熱い戦場の一つであるらしく、一つ一つの論点がかなり込み入っています。なんでなかなか話が先に進みません(というか自分の頭が悪いだけかもしれない)。今日…

Ruby で学ぶアメリカ税制 - 医療費控除上の被扶養者

今日は、個人所得税の項目別控除における医療費控除の対象となる、扶養者とは何なのか学びました。医療費控除の対象になるのは、 申告者本人 配偶者 被扶養者 の適格医療費です。本人も配偶者もそれほど難しいことはありません。問題は、被扶養者って誰よ、…

税法というこの怪物

ちょっと勉強の話を離れて軽く税法について。いまアメリカ税制を勉強していますが、実につまらないです。人生でこれほどつまらないものを勉強した記憶がほとんどありません。Wiley の問題でさえつまらないです。すべてがつまらない。なぜこんなにつまらない…

Ruby で学ぶアメリカ税制 - 非自発的変換

ある財産の破壊・盗難・収用などの理由により、その財産をやむをえず手放し、代わりに金銭やその他の財産を入手することを非自発的変換(Involuntary Conversion)と呼びます。このとき、原則として実現した利益はそのまま認識します(1年を超えて保有した事…

Ruby で学ぶアメリカ税制 - 同種財産の交換取引

同種財産の交換取引(Like-kind exchange)においては、原則として税法上の損益を認識しません。ただ、テストに出るのは例外のほうで、ややこしい話があります。まず同種財産の定義から。 事業用資産または投資用資産(個人使用目的の資産はダメ) 不動産は不…

Ruby で学ぶアメリカ税制 - 関連当事者取引による損失

関連当事者というのは、たとえば家族であれば、直系親族と兄弟、会社であれば、50%超を所有する株主と会社などの関係がこれに当たります。詳しい定義は教科書にゆずるとして、基本的に税務当局の見方は、「おまえら、別々の実体があるふりをしてるけど、…

Ruby で学ぶアメリカ税制 - 1250条資産の通常所得再捕捉

米国内国歳入法(Internal Revenue Code)の1250条は、減価償却を行う不動産の売却損益について規定した条項です。というと、基本的に建物が対象ですね。資産の売却益は原則としてキャピタルゲインになるわけですが、1250条は減価償却累計額の範囲で、その一部…